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海の森林、温暖化防ぐ? [今日の日経記事から]

地球温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)を吸収する海洋の植物の注目度が高まっている。アマモやコンブなどの役割が、陸の森林をもしのぐ大きさがあると、最近分かってきた。海中に固定された炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれ、CO2の貯蔵庫として見直す動きが世界で出ている。国内でも藻場を再生するなどの活動が始まった。

ニシン漁で栄えた北海道北西部にある増毛町。夏を迎えると日本海に面した海岸約300メートルに黒茶色のコンブがびっしりと生えそろう。


ここは5年ほど前まで、海藻が生えない磯焼けの海岸だった。日本製鉄が地元の漁協と組み、2014年から植生回復の実証事業を始めた。製鉄時に出る鉄分を含んだ砂利を土と混ぜてヤシの袋に入れて浅瀬に埋設する。コンブの生育に欠かせない鉄分を供給する仕組みだ。


近くの海岸で04年から先行的に始めた実験では、鉄分を供給しない浅瀬に比べてコンブの成長が進むことを確認した。1本当たりの重さが8倍大きく育つ成果も出た。


狙いは単にコンブの植生回復だけではない。海藻が吸収するCO2の量が大きなことが分かってきた。事業に携わる木曽英滋主幹は「藻場の回復は温暖化対策にもつながる」と話す。同社は三重県や長崎県でも同様の植生回復事業に取り組んでいる。


アマモやウミショウブに代表される海底に根を張る種子植物である海草や、コンブやワカメなどの海藻は、光合成で栄養となる糖を作る。原料は水とCO2だ。アマゾン川流域の熱帯雨林のような規模がなく、温暖化対策への貢献度は不透明だった。


ところが国連環境計画(UNEP)が09年に発行した報告書でブルーカーボンと命名して取り上げ、評価が一転した。森林などの陸域で貯留される炭素「グリーンカーボン」と区別して海草や湿地、マングローブの働きを調べた。


結論は「海は陸と同程度のCO2を吸収する能力がある」。海上・港湾・航空技術研究所の桑江朝比呂・沿岸環境研究グループ長は「研究の途上でまだ不確実な点は多い。しかし炭素を固定する海洋生物の可能性を示した意義は大きい」と解説する。


背景には、世界が脱炭素社会に大きくカジを切っている事情がある。温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」は、各国に温暖化ガス削減に向けた目標の提出を求めている。「国が決定する貢献」(NDC)と呼ばれ、5年ごとに条約の事務局に提出しなければならない。目標を達成するための道筋を示す必要があり、吸収量を増やせれば目標達成に近づける。


世界で60カ国以上が既に、ブルーカーボンの活用に向けた検討を始めている。米国やオーストラリアなどは具体的な算定に着手した。日本でも6月に定めた温暖化対策の長期戦略で「吸収源の可能性を追求する」と明記した。


ブルーカーボンの効果は国内でどれくらいあるのだろうか。桑江グループ長らの試算では、年132~404万トンの吸収を見積もれるという。最も少ない推計値でも都市の緑化より多い。日本の沿岸の場合、岩場が多いなどの生息環境や成長のしやすさなどの条件からアマモなどの海草よりも「コンブやワカメなどの大型藻場の潜在力が大きい」(桑江グループ長)。


ただ日本でブルーカーボンがCO2吸収源として定着するにはもう少し時間がかかりそうだ。検討会を設置した国土交通省によると「吸収量の推定の精度がまだ十分ではない」(港湾環境政策室)からだ。海藻類は陸の樹木と異なり年によって生育が大きく変動する。国は衛星写真やドローン(小型無人機)などを使い詳しく調べる方針だ。


炭素を吸収する以外の役割にも大きな期待が寄せられている。藻場が回復すれば小魚や海鳥など沿岸の生き物も集まる。東京大学の佐々木淳教授は「ブルーカーボンの考えが広まれば、生態系の保全にとっても大きなプラスとなる」と指摘する。


独自に取り組む先進的な自治体も出てきた。例えば横浜市は沿岸でワカメを養殖している。減らしたCO2の量をトライアスロン大会の運営などで排出されるCO2と相殺するのに充てる。市民の関心を高めて海の植物の働きを身近に感じてもらう狙いだ。


日本は温暖化ガスの排出を今世紀後半までに「実質ゼロ」とする目標を掲げる。四方を海に囲まれた日本は海洋国家で、海岸線の総延長は世界第6位の約3万5000キロメートルに及ぶ。ブルーカーボンを過小評価せず、大いに生かす道を探るのが得策だろう。

【所感】
 環境問題解決につながりそうな手がかり。是非前進して欲しいものだ。
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体調管理に気を付ける。
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